高松市の北東23キロメートルの瀬戸内海に位置する小豆島は、平均気温15度、年間降水量1200ミリメートルほどで、代表的な瀬戸内式気候の島である。小豆島がオリーブの産地として成功した理由は、この気候・風土が地中海沿岸とよく似ていたからといわれている。ちなみに香川県の県花・県木はいずれもオリーブになっている。
日本に初めてオリーブが持ち込まれたのは約400年前といわれるが、幾度かの試験栽培を経たのち、明治41年に本格的な栽培が始まった。日露戦争後、北方海域に広大な漁場を獲得した日本は、魚介類の保存・輸送の手段として油漬けを奨励。オリーブオイルを国内自給する目的で三重・香川(小豆島)・鹿児島で試験植樹を行ない、小豆島だけが栽培に成功する。昭和41年までの58年間は農林省の補助・直轄として栽培に取り組み、その後も香川県の単独事業として継続されている。その間、苛性ソーダで渋抜きして塩蔵するテーブルオリーブスを作ったり、挿し木による育苗法を開発したり、さまざまな研究が行なわれた。
全盛期の昭和39年には130ヘクタールの面積で400トンの収穫を上げたものの、その5年前にはオリーブ製品の輸入自由化が始まっていた。安価なオリーブオイルやテーブルオリーブスが大量に輸入され、オリーブ農家は打撃を受けて国内の生産は激減。昭和60年代には34ヘクタールに減少してしまった。