『日光唐辛子のしそ巻き漬け』は、男体山の山開きや、日光東照宮のお参りに訪れた人が買って帰る、日持ちがして軽く、日光らしいおみやげとして、江戸時代には既に流通していたという。東海道中膝栗毛で知られる十返舎一九(じゅっぺんしゃいっく)が日光を訪れた際の道中記に「こゝの名物、紫蘇巻きの唐辛子、つくばねとやらをかって、近所への土産にいたそう」という一文が登場する。(つくばねとは、山の岩石地に多い落葉半寄生低木のことと思われる)
このように歴史のある特産品『日光唐辛子のしそ巻き漬け』を製造・販売しているのが、世界遺産を構成する文化財のひとつ『神橋(しんきょう)』の近くに店舗を構える『油源』だ。代表の落合良美さんにお話をうかがった。
「当店は、江戸安政6年、初代油屋源七が菓子供物商として日光山輪王寺に出入りを許されて以来、代々みやげ物として、しそ巻き漬け唐辛子、羊羹などを製造販売してきました」4年程前に父の代から家業を受け継ぐ以前から、食に関わるお仕事をしていた良美さん。当時から地元の市場で食材選びをする際には、季節(旬)、産地などにこだわってきた。
歴史あるしそ巻き漬け唐辛子を継承し、自分の代で更に進化させたいと、使用する原料の野菜からこだわろうと考えた。しかし一時期は日光唐辛子の種が手に入りにくく、市場から消えかけたと思われた。「これは自分でどうにかするしかない」と、知り合いの伝手を頼り、種起こしをしてもらい、日光唐辛子を栽培してくれる農家さんを探すところから始めたという。