熊本にそびえる阿蘇山の周辺は、火山灰を多く含んだ土壌で、厳しい冬の気候が特徴。高菜漬けに使うのは春に育ってきた茎の部分で、1本ずつ手で折りながら収穫していく。
「阿蘇の高菜は霜が降りるからおいしいんでしょうね。三池高菜とは品種が違って、阿蘇高菜は野沢菜の仲間といわれています。花芽が出るころに、親指ほどの太さで収穫してもらっています」
そう話すのは、阿蘇高菜漬けを製造・販売している山一食品社長の中山達也さん。一般的な高菜漬けは「古漬け」と呼ばれる乳酸発酵したもので、飴色でピリッとした独特な風味がある。刻んで油で炒めたり、ご飯に混ぜたりするのが定番だが、塩クジラを刻んで合わせることもあるそうだ。
塩漬けで一晩漬けた阿蘇高菜の「浅漬け」も一般的になり、鮮やかな緑色は“おひたし”のように見える。漬けて2〜3日の浅漬けは、切る前に軽く手もみすると香りと辛みが際立つそうだ。醤油をかけて食べるほか、マヨネーズも意外と合う。生の阿蘇高菜を刻み、豚肉と油揚げを加えて炒め、醤油で味付けする「菜焼き」と呼ばれる郷土料理もある。