

生の雪菜はやや甘味があるが、湯通しすることで独特の辛味成分が出る。雪菜の細胞内にある液胞にイソチオシアネートと呼ばれる辛み成分が含
まれていて、それが熱湯の刺激で現れるようだ。「ふすべ(る)」という言葉は、青菜などを熱湯処理して辛みを出したり、うま味を出したり、苦味を取る意味の方言だという。「湯の通し加減で辛みの出方が違うんです。3〜5秒くらい熱湯に浸して、それを3回繰り返してからザルに取り、ふたをして1分ちょっと蒸らすのがポイントです」
水で余熱を取ってから、2%の塩分で漬け込み、ポリ袋などで密閉しておくと、2〜3日で辛みが出てくるという。揮発性の辛み成分なので、密閉しておかないと蒸発してしまうそうだ。
「そのまま生でサラダにして食べられますし、おひたしにしてもおいしくいただけます。でも、ワサビもカラシも入れていないのに、ふすべることで不思議と辛みが生まれてくるのです。これがいちばん魅力的なところでもあり、難しいところです」
ふすべ漬けのほかに、「冷や汁」という置賜地方の家庭料理もいただいた。シイタケ、凍みコンニャク、打ち豆、貝柱、油揚げを中心に、貝柱とシイタケの戻し汁のだしに醤油の味付け。冬はふすべ漬け、春は茎立ち菜、秋はタケノコなど旬の食材が加わる。