東海漬物
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第33回 島根県 神在月のころ、寒風にさらしてから漬け込む「津田かぶ」 松江市の周辺では、11月中旬から津田かぶの天日干しが始まる。刈り取った稲を自然乾燥する「はで」を活用した光景は、初冬の訪れを告げる松江地方の風物詩となっている。1週間ほど乾燥された津田かぶは、糠漬けに加工され、出雲地方の冬の漬け物の代名詞とし古くから愛されてきた。

伊原さんが「津田かぶの神様」と呼んでいる農家の畑。種蒔き前に殺菌をして、土づくりを徹底している。

かぶの地表部だけ赤くなり、地中の白い部分は先が細くなっていく。旬は秋~冬で、12月が収穫の最盛期になる。
 「津田かぶは、種苗会社から市販されているものも多く、在来種のものとはずいぶん姿が違うものもあります。この地域では、10年くらい前に、在来の種を保護しようと、県・種苗店・漬物メーカーなどが協力して、種採り農家が採種をして、農協が種を配布するようになっています」
 津田かぶは赤かぶだが、

地中部分は少なく、地表に出ている部分がほとんど横になっているのが不思議だ。

一般の白いかぶと交配して白くなってしまったり、大根と交配して曲がらずに丸くなってしまうものもあるそうだ。

神様の到来とともに始まる漬物づくり

稲を自然乾燥させる「はで」を活用して、津田かぶを天日干しする。昔はもっと段数が多かったという(左) 白い部分がアクセントになって、写真を撮りに来る人も多いという(右)

 旧暦10月は、全国の八百万の神々が出雲の国に集まる月。毎年、この時期は日本海側から冷たい北風が吹き、津田かぶの天日干しに向くという。
 「宍道湖は汽水湖で多少の塩分を含んでいるので、その冷たい風が乾燥に向いているのかもしれません。通常は、契約農家のみなさんが『はで干し』をしたあとで納入されますが、工場横の湖畔で乾燥させるものもあります」
 そう話すのは、伊原本店・営業本部長、山根善治さん。同社は1907年の創業以来、目の前に広がる宍道湖の四季折々の自然を感じながら漬物や味噌を作ってきた。「津田かぶ漬」は昔から野菜の少ない冬場の保存食として親しまれていて、昭和初期に商品化されたようだ。
 津田かぶとは、江戸時代の津田村(現在の松江市津田地区)で栽培されてきた「勾玉状」の赤かぶのこと。松江市の東側を流れる大橋川沿岸の津田地域は、宍道湖から流れる有機質を豊富に含んだ肥沃な土壌が特徴で、江戸時代には城下で消費する野菜類のほとんどをまかなっていた一大農業生産地だったという。
 また、当時の津田村には松江藩の菜園場があった。藩主の松平直政が近江出身だったことから「日野菜かぶ」などが栽培され、松江の気候風土に合ったものに姿を変えたと考えられている。
 津田かぶの種蒔きは9月初めから始まるが、最近は温暖化の影響で少し遅れて、中旬ごろからになっているようだ。石灰を散布して、深く耕して土を中和させておく農家もいる。畝にすじ蒔きして間引くか、株間30pくらいで5~6粒を点蒔

契約農家とのやりとりを担当している、伊原本店の代表取締役・伊原光夫さん。粘土質の畑で栽培する津田かぶは品質がよくなると言う。

きする。本葉が2~3枚のころに間引して、本葉6~7枚のころに1本にする。
 生育するにつれて、葉の重さでかぶが湾曲するそうだが、ほかの地域で栽培すると勾玉状にならないという。
です」
 調べてみると、日本穀物検定協会の米食味ランキングでは、西日本で唯一「特A」を獲得した高評価の良質米で「東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米」と言われているようだ。
 タンクで1週間ほど漬け込んで完成。こうして、収穫からおよそ2週間で津田かぶ漬ができ上がる。ぬか入りの樽に詰めたり、個別包装される。伊原本店では、津田かぶ漬本漬(糠漬)のほかに、浅漬け、甘酢漬けなどもある。

かぶ、塩、糠の順に、漬け込み用のタンクに重ねていく。最盛期にはタンクいっぱいになるそうだ(左)ブランド米の仁多米の米糠をふるいにかけて使う(右)

「干す」「選ぶ」「漬ける」の基本に忠実に

1日3千本くらいが工場に運ばれ、すぐに選別作業が行なわれる(上) 先端に包丁を入れて中にすが入っていないか確認する(下)

 漬物作りは、先代からの昔ながらのやり方を受け継いでいる。収穫したかぶは、葉付きのまま洗い、5~6本の束にして「はで」にかけて乾燥させる。天日干しすることで水分が抜けて、うま味の元となる乳酸菌の発酵を促す効果もあるようだ。
 「天候と乾燥ぐあいを見ながら、だいたい1週間くらいで漬け込みに入ります。たくあんは葉を食べないのでしっか
り乾燥させますが、津田かぶは葉もいっしょに漬けて食べるので、葉の青さを保ちながら、かぶをよく乾燥させることが大事なんです」
 工場に運ばれたかぶは、先のほうを少し切って、中を広げてすが入っていないか確認する。この選別で2割くらいは捨ててしまうようだ。その後、かぶ、塩、糠を順に重ねながら、塩分濃度6~7%で地下タンクに漬け込まれる。

タンクは2漕が並んでいて、漬け替えで切り返すときにもう一方に移される。
 「漬け込むときに使う米糠は、ブランド米で知られる仁多米の糠を使っています。地元では魚沼コシヒカリよりおいしいという人もいるほど
サラダに加える人もいるようだ。江戸の殿様も愛した伝統野菜の漬物は、松江の冷たい風に吹かれて、地域に根ざしていた。

昭和初期まで、糠漬けは農家が好んで食べ、町屋の方では「当分漬け」という浅漬けに近いものが食べられたという。

伝統の糠漬けから、甘酢漬けまで

 津田かぶ漬けを味見させてもらった。皮の赤紫色と真っ白な切り口との対比が鮮やかで、かぶの甘味とほのかな酸味が口に広がる。
 「津田かぶ漬本漬(糠漬)」は、最初はあっさりした浅漬けの風味だが、日数が経つと少し酸味が出てくる。地元では、2~3月に売っている乳酸発酵が進んだものが好きという人も多いようだ。「津田かぶ浅漬」は、新鮮な津田かぶを厳選し、一夜漬けにしてある。実の部分はあっさりと瑞々しい風味で、葉はシャキシャキとした歯触りで、DNAが同じという野沢菜の風味を感じさせる。「津田かぶ甘酢漬」は、かぶの実の部分だけをスライスして、香り豊かなゆず酢と合わせてある。津田かぶの自然な薄紅色が鮮やかで、ゆずの果汁と砂糖の甘味で上品さを感じさせる。
 荒木英之さんの『松江食べ物語』に
よると、明治初期に松江の北堀橋住人・荒木屋久右衛門が、京都で市販されていた白かぶの千枚漬けをヒントに甘酢漬を考案したとある。当時のレシピは、カンナで薄く削った津田かぶに「求肥昆布」「柚子皮」「鷹の爪」を加えて、「酢煎り酒(合わせ酢のようなもの)」で漬けたそうだ。それまでの糠漬けと違った風味で、あっという前に普及して松江名物になったという。
 「津田かぶ漬は、ほとんどがお茶請けに食べられています。ギフトやお歳暮などに購入されたり、故郷の味として島根出身の人が取り寄せています。自家菜園で栽培している人は家庭で漬け込んでいて、塩分濃度もそれぞれ違います。うまく漬けると1年近く持ちますが、ほとんどのひとは2~3か月で食べきるようですね」(伊原社長)
 最近は、二十日大根のように、生で

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