

水田の裏作で栽培していたことから、菜の花の種まきは稲刈りが終わってから。西日本で親しまれているキヌヒカリは9月上旬から稲刈りが始まるので、下旬過ぎに苗床に種をまき、30〜40日間後に畑に移植する。以前は「赤ダネ」と呼ばれる在来種(種の色の違いから西洋アブラナは黒ダネと呼ぶ)をそれぞれの家で自家採種していたようだが、現在は、種苗会社の交配種をまいている。

摘み菜用の花菜として育成された交配種で、側枝が出やすく、二番枝、三番枝の伸びが早いという特徴がある。
石灰を肥料に用い、40〜50センチ間隔で畑に定植して、2〜3月に間引きをして株を大きく育てる。その間は、毎月1回追肥を与えながら、青虫などを手でつぶす作業がある。
転作の休耕田を借りて、連作を避けて毎年違う場所で栽培し、農薬や除草剤は使っていない。
菜の花の収穫は12月ごろから始まる。最初は花が若くて小さいので「新漬け」にするそうだ。新漬けの場合、収穫した花を流水で3回洗い、1時間ほど水切りしておく。そのあと桶に入れて、塩を入れて手でもみながらなじませていく。4パーセントの塩分で約5日間漬け、青臭さがなくなればできあがり。袋詰めして冷凍保存しておく。
「黄金漬けのほうは、花を洗ってはいけません。花粉が落ちて、きれいな色にならないんですよ。満開の菜の花のきれいな色を出すのが難しいんです」
長期間保存するため、塩分は8〜9パーセントとやや高め。唐辛子を入れてちょっとピリッとした辛みも加えている。おもしろいのが、5月の終わりごろに行なう「ぬか座布団」を作る作業である。米ぬかをぬるま湯で練って、塩と唐辛子を加えて耳たぶくらいの固さにしたものを作り、それで黄金漬けの上を覆ってしまうというのだ。さらにその上に押しぶたと重しをのせて保存する。
「普通の漬け物と比べると重量のある漬け物石を使います。石が軽いと色が黒くなってしまうので、重さの調整も難しいんですよ。漬け込んだあとも、6月から9月にかけて、日よけや風通しに注意を払います。温度や湿度の管理が大変だけど、黄金漬けができたたときの喜びはなんともいえませんから」