
菊ごぼうの栽培には赤土が適している。火山灰土や黒土だと、どうしても香りが弱くなる。11月に入って霜が3回降りたら収穫を始める。その前だと、トウが立ってなくても筋っぽいそうだが、霜に当たると柔らかくなって食感がよく、香りが強くなる。
中津川の人たちは「他の土地で採れた菊ごぼうは香りが弱い」と言い、自分で栽培している人でも、石田さんの赤土の畑で採れた菊ごぼうを待ち望んでいる。中津川の人たちにとって、菊ごぼうは

正月のごちそうなのだ。
「これがないと正月が来たような気がしないという人が多いですね。味噌漬け、たまり漬けのほか、ニンジンと昆布とスルメを入れて松前漬けにもします」
石田さんのお勧めの食べ方は、醤油の浅漬け。1〜2時間くらい、醤油とみりんに漬けておくと、いちばん香りがいいそうだ。もちろん生でサラダにすれば、シャキシャキとした食感も楽しめる。
かつて、中津川には菊ごぼうの生産組合があったほど栽培されていたが、一度作ると7〜8年は同じ場所で栽培できないこともあり、広い畑を維持できなかったり、高齢化もあって、しだいに作る人がいなくなってしまった。
根を長く育てるのには手間も技術も必要らしく、菊ごぼう発祥の地で、この