東海漬物
  • 企業情報
  • 品質保証
  • きゅうりのキューちゃん
  • こくうま
  • 商品情報
  • 漬物機能研究所

第9回:青森県
津軽地方に伝わる珍しい「ミズの一本漬け」と「ご飯の漬物」
冬は地吹雪が舞う寒さの厳しい津軽では、山菜が収穫できる春の訪れが待ち遠しい。
山菜シーズンは春から初夏までが一般的だが、
「ミズ」と呼ばれるウワバミソウは秋まで収穫できる地元ならではの山菜である。
津軽の西北地域ではミズを切らずに漬け込んだ「一本漬け」が親しまれているほか、
ご飯を使った独特な漬物が存在している。

ミズを「一本漬け」にするのは、津軽地方でも一部の地域だそう
ご飯の漬物「すしこ」は、その色から「赤めし」や「赤いご飯」などとも呼ばれる


  ミズを一本漬けにして豪快に味わう

最初に訪ねたのは中泊町にある特産物直売所。ここから山菜採りのベテラン、田中恵津子さんと成田昭さんの案内で山に向かった。
 「私は山菜を採って瓶詰めにしたり、漬物を作ったりするのが好きだけど、実は自分ではあまり食べないのよ」
山菜を収穫しながら、田中さんはそう言って笑う。斜面にある山菜を採っているときには、視線はもう次の山菜を見つけている。30分くらい歩いただけで、ひと抱えのワラビやネマガリダケ(チシマザサ)が集まった。その後、湿地を好むミズの収穫に向かった。沢の両側に密集して生えていて、根元の色の違いによって赤ミズと青ミズがある。今回収穫したのは赤ミズで、根元の赤い部分を包丁の背でたたくと“とろろ風”に味わえるという。
 「ミズの一本漬けにするには、本当は夏のお盆過ぎごろに収穫したほうがいいんですよ。太くなって実も詰まっているし。これくらいのは筋がなく柔らかいのでミックス漬けに向いてますね」

驚くほど手早く山菜を収穫していく田中さん奥/ネマガリダケ
手前/ワラビ

収穫したミズは手で皮をむいて熱湯にさっとくぐらせてから塩漬けで冷凍保存しておく。塩抜きしたあとでゆでたり炒めたりして食べるが、一本漬けの場合は皮をむかずに漬け込み、皮をむきながら食べるのが津軽式の食べ方。一本漬けのほうは葉っぱが付いた状態でミズを束ね、葉を切り落としてから樽で塩漬けする。山菜の目方の5割の重さの塩を入れ、軽めの重しをのせておく。塩漬けのときに糠を入れる人もいるが、田中さんは入れないほうが色がよくなると言う。

田中さんの「山の先輩」成田さん。群生するミズの緑が清々しい 根の部分が赤い「赤ミズ」。沢の水でさっと洗う手際のよさ

田中さんの「山の先輩」成田さん。群生するミズの緑が清々しい 根の部分が赤い「赤ミズ」。沢の水でさっと洗う手際のよさ

塩抜きしたあとで、昆布・だしの素・たかのつめで作った調味液に漬ける。東北の食文化に詳しい食文化研究家の斎藤博之さんによると「塩漬けまたは糠漬けにしてそのまま拭きとって食べる」のが一般家庭では多く、東北の日本海側各地で食べられている。

ミズは束ねて葉を落とし、塩漬けに 塩抜きして、調味液に漬け込む

赤ジソの実がたくさん入っているのは、「トウ漬け」と呼ばれる漬物。赤ジソの実のことをトウと呼ぶそうだ。ゴボウ・キュウリ・ニンジン・大根など、材料は好みでなんでもよい。塩と醤油で味付けしてあり、ご飯のおかずにぴったりの味だった。
 ネマガリダケはピーラーで皮をむくか、さっとゆでてから竹の子の皮はぎ器を使う。ネマガリダケは収穫時期が半月ほどしかないので、

 

@赤ミズは熱湯でゆがくと、赤からきれいな緑色に変わる Aわらびのアク抜きは、灰をふりかけて熱湯をかけ、一晩置く Bネマガリダケは、皮をむく前にさっとゆがく C「皮はぎ器」を使うと、面白いようにネマガリダケの皮がむける

合わせた独特な料理が存在している。
 紅鮭とネマガリダケを使った「飯ずし(いずし)」はその代表といえるだろう。塩をまぶした紅鮭を五倍酢(普通の穀物酢の五倍濃縮で、酸度22%)に一晩漬け込み、炊いたもち米・塩・ショウガ・唐辛子を順番に重ねるようにして1〜2日漬け込むと出来上がる。
 青森県は、津軽地方で代々受け継がれている料理を「津軽料理遺産」と定め、「飯ずし」を含めて100種類以上の料理を認定している。昔から伝わる「飯ずし」は酢を使わずに塩漬けした魚や野菜に、麹ともち米を合わせて乳酸醗酵させていたが、最近は気温が下がりにくくなったり建物が暖かくなって、麹を使って低温醗酵させることが難しくなったほか、酢を加えれば腐敗せずにすぐ出来ることもあって、酢を使う調理法が一般的になったのかもしれない。

手前/トウ漬けは、赤ジソの実が入っているのが特徴。奥/ミックス漬け 「紅鮭とネマガリダケの飯ずし」は、津軽料理遺産にも認定されている“ご馳走”

一本漬けの皮むきは、食べながら毎日収穫に出かけて皮むきから瓶詰めまでを行なっている。
 青森県はかつての藩の影響もあり、米作地帯の津軽、畑作地帯の南部というように食文化にも違いが見られる。なかでも津軽の沿岸部には海産物と米を組み

手前から/「みがきニシンと山菜の飯ずし」「すしこ」「ネマガリダケの入ったすか漬け」「山蕗の一本漬け」「きゅうりの粕漬け」ご飯を使った漬物の豊富さ

深浦町の「セイリング」という食堂を訪ね、佐藤陽子さんにご飯を使った独特な漬物をいくつか教えてもらった。  「私が作る飯ずしは、酢を使わないで醗酵させています。ハタハタを使うときは柔らかくするために少し酢を入れますが、みがきニシンはそのまま塩漬けで使います。唐辛子は必ず入り、古漬けになったキュウリを足すのがポイントですね」
 飯ずしは東北から北海道にかけて食べられており、北海道では「はさみ漬け」と呼ぶところもある。漬物ではなくすしに分類されるという説もあるが、ご飯を利用した漬物の一種といっていいだろう。
 数種類の山菜を混ぜ合わせた漬物は「すか漬け」と呼ばれる漬け方にしてくれた。山菜はフキ・ワラビ・タケノコなどなんでもよく、アク抜きをしてから使う。材料をざく切りにして、塩・酢・昆布の細切りを入れて混ぜる。山ワサビの葉の部分を加えて何日間か置いたあとに、ご飯の出番がやってくる。うるち米ともち米を半々ずつにして炊いてすり鉢に入れ、水を加えながらどろどろにし、布でこした搾り汁で乳酸醗酵させるのだ。「すか漬け」の「すか」は酸っぱいという津軽弁で、まさに酸味のある漬物に仕上がる。

ご飯を使った漬物の豊富さ

@下ごしらえをした山菜に調味料を入れ、混ぜる A山ワサビの葉の部分を入れて混ぜ、何日間か置く Bご飯に水を加え、すりつぶす  Cそのまま入れると見栄えが悪いため、すりつぶしたご飯を布でこした搾り汁を入れ、発酵させる

山菜をご飯で漬けた「すか漬け」に対して、ご飯そのものを漬物にする「すしこ」がある。津軽から秋田県北部の沿岸部で食べられている珍しい漬物で、津軽では「赤めし」、秋田では「赤ずし」という呼び名もあるようだ。ご飯の漬物でご飯を食べるという、ちょっと不思議な感覚だ。
 「田植えのときの弁当代わりにもしますが、お盆の時期、赤ジソが大きくなるころにたくさん作ります。きれいな赤色にするのが腕の見せどころなんです」

津軽の多彩な漬物を 作ってくれた佐藤さん 奥/ご飯に具材を混ぜた状態。手前/完成した「すしこ」はきれいな赤い色

 

シソ漬けは軽く塩抜きをしておく。キャベツを塩もみしてしんなりさせて、数時間置いてから水を搾る。キュウリの古漬けは水で洗ったあとさっと湯に通し、流水で粗熱を取ると、塩がすぐに抜けてパリパリ感が出るらしい。ミョウガは薄切りにする(今回はシソ漬けを使ったが、生のほうがよい)。すべての材料をボウルに入れて、うるち米ともち米を半々にして炊いたご飯を加えてよく混ぜる。密封容器などに入れて軽く重しをすると、3日目くらいから食べられる。

@「すしこ」の具材、赤ジソは塩漬けして、黒いアクを出しておく Aキャベツは塩もみし、しんなりさせる B塩抜きしたきゅうりの古漬けを入れるのがポイント Cミョウガの赤ジソ漬けは薄切りにし、すべての具材にご飯を加えよく混ぜる

 

よく考えると「すしこ」は主食と副食が一体化した食べ物でもある。昔は一斗樽に漬け込み、体力の必要な稲刈りのときに食べたり、冬の間のご飯のおかずにもなった。

飯ずしと同じようにご飯を利用した漬物の一種だが、北前船の交流によって「なれずし」(魚を塩や米飯で発酵させた保存食品)が東北に伝えられ、現在の形になったのだろうか?

ページの先頭へ

(C )Tokai Pickling Co., Ltd. All rights reserved.